村山 洋史

(高齢社会総合研究機構 公衆衛生学・老年学)

「つながりと健康格差」


予習文献

・村山洋史『「つながり」と健康格差』ポプラ社, 2018

講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

 周囲の環境は健康と関連性があることを学んだ。孤立と孤独は違うけれども、社会的孤立が孤独感を生んだり、生理学的にストレスを感じたりするため孤立は問題だと言える。その上で、高齢者が社会とのつながりを増やすためにどうすれば良いのか案を出し合った中で、私は高齢者が持っている知恵や経験を若い世代と共有する場を設けることに意味があると考えた。高齢者が必要とされながら社会にも良い形で還元されていきどちらも繋がりを保つ動機が生まれるからだ。例えば、私は戦中・戦後の日本史は小中高でなかなか時間を割いて学べなかった記憶がある。現代により近い歴史であればあるほど時間感覚や時代評価がわからないという矛盾を抱えていた。その点、私たちが生まれる前からまさに教科書に書かれた時代を生きてきた世代と教育の場で対話をすることで、若者も歴史への想像力が養われるのではないか。高齢者に押し付けがましくないアプローチで社会と何らかの関わりを持ってもらう道を今後も考えていきたい。(法学部3年)

 

 まず講義について、様々なデータを提示していただきながら非常にわかりやすい展開で進められていて、とても面白く、そしてとても勉強になりました。特に、酒やタバコよりも社会とのつながりの要素の方が長寿のために重要な要素であるというデータや、運動の有無よりも参加グループの有無の方が要介護リスクを低める要素として重要であることを示唆するデータが印象に残っていて、人間はつながりを持って生きているのだなということを強く感じました。

 そしてグループワークテーマについて、私の専攻が都市工学というのもあって、地域に根付いたグループ作りに興味があり、地域の活性化を兼ねて住民がより健康的に暮らせるシステムができればいいなと考えています。ただ、グループがあっても健康面でグループに参加した方がいい人たちがなかなか入れていないという現状があることを講義で知って、その辺りを救済するシステムを考えることが必要になってくるのかなと感じました。講義で紹介されたオプトアウト方式はその案の一つとして有効だと聞いていて思いました。(工学部3年)

 

孤立死・孤独死に関心のある私にとって、今回の講義は非常に有意義なものであった。そうした不幸な事態が起こってしまうメカニズムを考える契機となった上に、現状を知ることができた。その中で最も驚いたのが、孤立死・孤独死する人の割合が最も高いのは東京都23区であるということだ。

なんとなく、人が少なかったり若者が不足している地方の方でそうした事態は起こるものだと考えていた。23区に人口が集中していることから、何となくその辺りに理由があるのかなと思う。

また、個人的には企業における社会的孤立にも関心がある。その中ではトランザクティブメモリーが解決策のヒントになってくると考える。この点ではIBMの組織構成に通じる点がある。つながりを持つためには、つなげる役割を集団において担い、知の共有を行うことが重要だと思う。もっともこれは若いうちからの努力が必要となるであろう。今後も高齢者の孤立を防ぐ解決策を考えていきたい。(文学部4年)