第9回 児玉龍彦(東京大学先端科学技術センターシステム生物医学教授)

「原発事故と除染の科学」

 

 

学生へのメッセージ

原発事故は膨大な放射性物質の環境中への放出を産み出した。膨大な放射性物質は、自然と人体の中で濃縮と拡散を繰り返すが、総量は減らない。除染とは環境からそれを隔離して減衰をまつことである。その対応からこれまで見えなかった社会を動かす哲学が見えてくる。


講義後情報コーナー

履修者のレスポンス抜粋

 

◇文学部・社会学4年      

これを機会に日本の除染技術を高めるべく、工夫していかなければならないのかなと思いました。というのも、今も海外では原発が数多く存在するので、可能性としてはこれからも原発事故が起こる蓋然性が大きいからです。具体的には、除染を入札方式で民間に委託します、と約束して、技術革新等を促すのも一手かなあと思いました。

 

◇法学部・第2類4年

大丈夫だから安心してください」と繰り返し政府からコメントが出ていましたが、安心させようとする意図が見えるコメントはかえって国民を不安にさせ、正しいことも正しいものとして受け取られなくなってしまったのだろうと思った。なぜそういう対応をするのかと考えた時に、政府は国民を愚かな大衆と考えて発言しているのかなと思った。先生の言う通り、評価なしの100%事実を伝えれば案外混乱も起こらないだろうと感じた。

 

◇工学系研究科・建築学M2

情報を受け取る側の情報リテラシーの高さ及び行動のモラルについては、私個人としては安易に信用すべきではないと思った。私達世代の若者はネットや書籍など様々なメディアの情報を比較検討する習慣を持っている。しかしTVからの情報を一方的に受け入れることに慣れている人達や、そもそも情報源が限定され、比較検討の余地がない人々にとっては、情報はパニックを引き起こす可能性を常に帯びていると思う。もし情報を発信するのであれば、情報に関して事実と推定、可能性を区別し、具体的な行動指針までを含めるのがベターだと思う。