第5回  マイク・モラスキー(一橋大学大学院社会科学研究科教授)

「居酒屋と喫茶店に見られる昭和ノスタルジー ――<第三の場>から再生を考える」

 

 

学生へのメッセージ

最近、「昭和レトロ」に対するノスタルジーと憧れが目立つ。例えば、新しい居酒屋や喫茶店で昭和20-30年代の雰囲気を再生しようと工夫を凝らしている店が増えているが、その際、本当は何を再生しようとしているのだろうか。本講義では、このような町空間を通して〈再生〉を問い直す。

 

 

参考文献

・マイク・モラスキー著『戦後日本のジャズ文化――映画・文学・アングラ』(青土
社、2005年)

・マイク・モラスキー著『占領の記憶/記憶の占領――戦後沖縄・日本とアメリカ』鈴
木直子訳(青土社、2006年)

・マイク・モラスキー著『ジャズ喫茶論――戦後の日本文化を歩く』(筑摩書房、20
10年)

・宮脇俊文+細川周平+マイク・モラスキー編著『ニュー・ジャズ・スタディーズ――
ジャズ研究の新たな領域へ』(アルテスパブリシング、2010年)

・Ray Oldenburg, The Great Good Place: Cafes, Coffee Shops, Bookstores, Bars,
Hair Salons, and Other Hangouts at the Heart of a Community (DaCapo Press,
1999)

 


講義後情報コーナー

●履修者のレスポンス抜粋

  

◇文学部社会学3年

先生も触れられていたように「目的のないムダな時間」をいかに作るかが重要だが、全く目的のない場が成り立つのか、は疑問だった。やはり「ゆるい」目的があった方が、日本人は集まりやすいのではないか。

  

◇経済学部3年

「第三の場」の成立を考えると、例えば「ジャズを聴きに」や「お酒を飲みに」という目的が最初にあり、その目的が次第に薄まって、代りにコミュニティにいる安心感(「精神的解放」)を得ることが目的になっていったのではないかと考えられる。これを再生という視点から深めてみると、コミュニティ再生のためにはそれ自体を最初の目的にするのではなく、何か別の(汎世代的な)目的を媒介にして、間接的にコミュニティの再生を目指すのが自然であるように思う。

 

人文社会系研究科英文学M2

・なぜチェーン店がはやるか

「いつ行っても開いている」というのはすごく大事なことで、そうでないと「心のよりどころ」になりにくいのではないでしょうか。完全な個人経営ならともかく、交代制で開けておく等で、ずいぶん違うのでは。

・チェーン店は心のふるさとになり得ないか

「チェーン店は心のよりどころにならない」「地方活性化につながらない」というのは、本当に本当でしょうか。1980年代の中学生にとって、新しくできたコンビニが如何に心のやすらぎを与えてくれたか、また昔の学生さんで、マクドナルドでのアルバイト体験とその仲間がとても大切な大学時代の記憶だった、という例もあります。

 

◇工学系研究科建築学専攻M2

私の学科で震災復興を扱う場合は、都市計画や構造的側面、コストやプロジェクトマネジメントといった側面からのアプローチが多かった。私もそれでいいと思っていたが、今日の講義で…[中略]…世代を越えた取り組みになるという側面、街の営みを支える個人のモチベーションの観点からの取り組みが欠けていたと痛感した。都市空間という生活の器や仕組みも不可欠だとは思うが、今日知ったような、個人を起点にした復興、街づくりの視点や方法論を大切にしたいと思う。

 

 

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●履修者向け: 朝日講座 第5回 講義メモ(TAノート)
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